2018/07/01

何故、Bコースで海外に出たかったのか【イギリス:KCL】

さて、東京医科歯科大学 の歯学部歯学科、医学部医学科で行われている研究実習/プロジェクトセメスターという制度ですが、あまり一般の方には馴染みの無い制度だと思います。

僕は別の大学を経験してから医科歯科に入学しているので、そういった視点からもこのポイントに触れてみたいと思います。



研究実習は、一般の人にわかりやすい言い方をすれば、一般的な大学の研究室配属+卒論執筆の流れと非常によく似た制度です。通常の大学では1~2年次にかけて一般教養を学び、2~3年次まで専門教育を受け、4年次に研究室へ配属され、卒論を提出して卒業。というような流れになるかと思います。(細かい期間の違いなどはありますが…)

ざっくりとした説明ですが、医科歯科では2~3年次に基礎医学を学び、3~5年次に臨床歯学を学び、5年初夏にCBTを受け、5~6年に臨床実習を行います。基礎医学を学び終わった4年次の初夏に専門の勉強を一時中断し、2ヶ月間(希望者は夏休みも使い3ヶ月間)実習を行う。という流れになります。

僕が知る限り、全学生が研究を体験出来る。というのは非常にユニークなカリキュラムであり、医科歯科が日本の歯学界を様々な方向から牽引する原動力になっているのかもしれません。未だ国家試験に合格していない自分が言うのは非常におこがましいことですが、やはり研究を知ったうえで臨床に望むことが出来る/研究の実際を知った上で将来の進路選択が出来るというのは強いと感じます。最近、JDSAという日本全国の歯学科学生で繋がろうという動きに誘って貰い、他大の歯学科の方と交流する機会が非常に多かったのですが、そのミーティングで「ロンドンで研究するからこの夏日本に居なくて…。」と言うと「もっと基礎系の研究を知りたかった。」「医科歯科ってそんなに恵まれた環境なんですね…。」と仰って頂く機会が多く、如何に自分たちが恵まれた環境に居るか。を実感します。


さて、シラバスにある授業の目的、概要等は
<引用>
医療の進歩に不可欠な医歯学研究を自主的に実践することで、問題解決の方法を習得するとともに科学的検証の重要性を理解し、歯学研究に貢献できる歯科医師としての技能と意識を涵養する。 
<引用終>

ということで、歯学研究に対する高い意識と科学的検証、問題解決能力の向上を重視していることがわかります。これはやはり医科歯科が歯学界において日本トップの治療機関であることと、日本トップの研究機関であるということを端的に表していると思います。

また、授業の到達目標(SBOs)を見るとわかるように、生徒の自主性を非常に重視したカリキュラムとなっています。
<引用>
1) 自ら関心を持つ問題について、配属先教員と相談し研究課題を設定することができる。
2) 研究課題を科学的研究として遂行するための計画を立て、自ら説明することができる。
3) 研究活動に必要な具体的な知識、技能、適切な態度を習得することができる。
4) 研究結果を科学的に検証して評価することができる。
5) 研究活動について報告書を作成し、発表することができる。 
<引用終>

このように、生徒が自主的に考えながら各研究室にて先生の指導を直接受けることが出来る。というのは本当に貴重な機会なわけです。

Top universities with the best student-to-staff ratio 2018によれば、東京医科歯科大学は学生・教員比率は世界11位に位置しており、その恩恵を思いっきり受けているカリキュラムです。(過去にはもっと高い順位でしたが、日本の医大が最近は上位にガンガン入ってきていますね。集計方法でも変えたのでしょうか…。)


と、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

「何故藤原はBコースで海外に出たかったのか。」

当然幾つかの答えがあるわけですが

1:PhDを海外で所得したい。かもしれない

2:海外の研究室でポスドク経験を積みたい。かもしれない

3:将来、海外で働きたい。かもしれない

4:海外の大学がどんな感じなのか知りたい。

5:久しぶりに母国に帰りたい。

というのが主な理由に挙げられると思います。


*5に関しては後日別の記事をアップするつもりですが、イギリスは僕の第二の母国(という言い方が正しいのかわからないのですが…)であり、Bコースでの渡航先としてはイギリスしか考えていませんでした。


また、死に場所は出来れば日本が良いな。と思っていますが、ユニークな生い立ちをしているので、せっかくだから海外で働いてみたい。と思っているのも事実です。
とにかく色々なことを経験したい。というスタンスで生きてきているので、面白そうなことがあればやってみないと気が済まないタチでもあります。
更にもっと現実的な話として、再受験から歯科医師という職業を目指した為、僕には時間が残されていません。開業してしまえば定年という概念は薄れますが、定年の無い海外に出るというのも一つの選択肢に見えるのも事実です。


こんな理由でBコースを選択し、モジュールコーディネーターである井関先生にイギリスのキングス・カレッジ・ロンドンを紹介していただいたのですが、一つだけ引っかかっている所があります。僕は自転車の元実業団選手であり、将来的に日本の自転車競技に対してスポーツ歯学という視点から関わることが出来れば良いな。と強く思っています。

材料工学的な視点や構造力学的な視点から持久系スポーツの競技者が無理無く使えるマウスピースの開発をしたい。と思っており、医科歯科のスポーツ歯科学で研究させて頂く。というのも非常に魅力的に感じました。
ただ、このテーマは長期的に取り組みたいテーマであるということに加え、ガッツリ臨床なので今回は見送り、機会を伺うことにしました。
ある意味趣味の延長にある内容なので、ライフワークの1つとして気長に探求していきたいと思っています。


これを言ってはおしまいですが、”海外でしか出来ない研究。”というのはよっぽど特殊な研究内容で無い限り存在しないように思います。また、日本に生活基盤があり、日本語が母国語であればそういったストレスも無いまま最高の研究環境に身を置くことが出来るわけです。


Bコースはそういった事実に正しく?目を向け、それでも海外に出て経験値を稼ぎたい。という人にとてもオススメ出来るカリキュラム。というのが僕の結論です。(藤原)


将来日本に留まるのであれば、本当に海外での経験値ってそんなに価値があるのでしょうか?海外での経験が自分の足を引っ張ることはありませんか?と、強く感じているこの頃です。海外での経験って確かに視野を広げるには良いかもしれませんが、日本は日本、他国は他国。難しいですね。うん。でも僕は個人的にはBコースを選んで良かったと思っています。